チャートツールがSFプロトタイピングワークショップのファシリテーションを支援する可能性の実験的調査

Charting the future: An experimental investigation of a chart tool's potential to support science fiction prototyping workshops

概要

SFプロトタイピング(SFP)は、SFを活用して未来のビジョンを描くための有効なワークショップ手法ですが、経験や語彙の少ない若年層(高校生など)にとって、その進行(ファシリテーション)は大きな課題です。本研究では、ファシリテーターの役割を補完・代替するための「チャートツール」を開発し、その有無が参加者の議論や最終的なアウトプットに与える影響を実験により比較・検証しました。

研究の背景と目的

急速な科学技術の発展に伴い、未来社会を構想することはますます難しくなっています。SFPは物語を通じて新しい未来のビジョンを創出する手法ですが、議論を広げ(発散)、まとめる(収束)といった質の高いファシリテーションが不可欠です。初心者にはこの進行が難しいため、アイデアをノードとエッジで視覚化するWebベースのチャートツールを開発し、ツールが人間のファシリテーション機能をどこまで代替できるかを調査しました。

実験の方法

日本の高校生と大人を対象に2つの実験ワークショップを実施しました。まず、大人と学生のファシリテーターを比較し、経験の差が議論に与える影響を確認しました。次に、ツールによる代替効果を検証するため、高校生を対象に「人間のファシリテーターなし・チャートツールあり」と「学生ファシリテーターあり・チャートツールなし」の2条件でSFPを実施し、創出されたアイデアの数やストーリーの長さ、議論の質を分析しました。

実験の結果

  • アイデアの収束とストーリーの深化: チャートツールありの条件では、なしの条件に比べてアイデアの発生数は有意に減少しました。しかしこれはツールによって議論が適切に「収束」したためであり、作成された未来のストーリーはより長くなる傾向が見られました。
  • ファシリテーション機能の代替: 質的評価の結果、ツールは「アイデアの発散と収束」や「内省(Reflection)」を効果的にサポートできることが分かりました。一方で、参加者がツールの操作に満足してしまい深い内容に踏み込まないケースも見られました。

論文発表

2025年

  • Tomoya Minegishi, Miwa Nishinaka, Kenichi Shibata, Kenji Nakamura, Dohjin Miyamoto, Atsuya Fujimoto, and Hirotaka Osawa. 2025. Charting the future: An experimental investigation of a chart tool’s potential to support science fiction prototyping workshops. Social Sciences and Humanities Open 12, October: 102258.

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